さて、トランスミッションラインスピーカーですが、音道は全長1850mmで折り曲げ回数が多いので共鳴管としてきちんと動作するか多少の不安はあります。
このような音道の形状です。吸音材の量は最終的に上の写真の状態です。最初この倍の量を入れていたのですが、ジュン君に止められ、試した結果半分の量にしました。音のインプレッションは以下の通りです。
吸音材無し:かなり下まで伸びていますし、中低域が厚く迫力の低域を楽しめます。折り曲げが多いせいかボーボーいう感じはあまりありません。しかし、計算上45Hzの一次共鳴はかなり弱くなっています。下は50Hz辺りから音圧が上がる感じです。2.5インチのユニットからこの低域はかなり凄いと言えるでしょう。しかし、音像は巨大化しています。f特上は一番いいかもしれませんがJuveAcousticsの音ではありません。ステージが見えるような音とは程遠い音です。どっかんどっかんバスドラ鳴らすのには良いかも。しかし、内部の音が盛大に表の音に混ざり、とても雑な音です。吸音材を入れない、もしくは少ししか入れない背面にロードをかけるスピーカーの典型の音です。こういう音を好きな方は多いようですが、JuveAcousticsの音とは相いれません。
吸音材半分(写真の状態):低域の量はぐっと減ります。が、これだけ背面の音を吸音するととても緻密な音になります。密閉とは異なり背面の音は解放されているため、ユニットの動きはスムーズです。排圧がかからないため中高域の解像感の高さはバスレフより上かもしれません。非常に高い解像感とシャープにフォーカスする音像は同時に制作したBlockDuct-140siよりも上に聴こえます。これはなかなか凄い。
吸音材多め(写真の状態の倍の量):締まった低域で質は高いが量が足りていない、そんなベースの音でした。確かに吸音材入れすぎでユニットのf0だけに頼ったようなだら下がりの低域特性です。しかし、このユニットでこれだけの解像感が出せるのか、という驚きもありました。しかし、せっかく1850mmもの音道にした意味があまりなくなっています。この低域の量ならば半分の大きさ(半分の音道)でも同じ音が出せそうな感じがします。
結局、吸音材は半分の量で行くことにしました。トランスミッションラインスピーカーとしては2作目です。今回は板材はアカシアの集成材を使ってみました。アカシアの集成材を使うのは2作目になります。あまりいいイメージがなかったのですが、ジュン君のアカシアは良い音しますよの言葉を信じて使ってみました。あまりいいイメージがないと言いましたが、主に見た目のイメージが好きではないということが大きな要因です。
塗装前の状態です。サイドの写真を撮ればわかりやすかったのですが、濃い色と薄い色の対比が激しくモザイクのように見えるのがあまり好きではないのです。単なる個人的な趣味ですけど!
ということで、オイル仕上げにしたのですが、クリア仕上げではなく色の差を無くしたかったのでブラウン系の色付きオイルで仕上げました。
単なる趣味の問題ですけど、やはりこちらの方が落ち着きが感じられて好きですね。
高さは400ミリあります。幅は110ミリ。奥行250ミリです。板厚は15ミリ。
全てアカシアの集成材で、15ミリは鳴くかな?と多少の不安もありましたが、音道が32ミリ(×80ミリ)なので箱鳴きによる音像のぼやけは一切ありません。
ブロックダクト式以外で初めてsiを型番に入れるモデルになりました。siはステレオイメージの略号です。
トランスミッションラインスピーカーは教科書的なモデルがありません。トランスミッションラインスピーカーとしてネットに出ているものはみんなそれぞれ勝手な解釈をしているのが現状です。それはうちも含めてです。
JuveAcousticsとしては、共鳴管の一次共鳴を活かす、というイメージで設計・制作します。2次共鳴、3次共鳴は吸音材で消す、というような設計です。今回、2次共鳴、3次共鳴を消すために吸音材を沢山入れましたが、入れすぎで1次共鳴も消してしまうことになりそうでしたが、ジュンくんの待ったによりそれは回避できました。サンキュージュン!
結果、吸音材を半分の量にしたことで2次共鳴、3次共鳴はしっかり抑え込みましたが、1次共鳴も多少抑え込んでしまっています。しかし、レベルは想定より落ちていますが50Hz辺りから反応しているので一応成功としておきます。
正直、想定した音にはなっていません。いい意味で想定外だったのはsiモデルにするレベルの中高域のシャープで緻密な音です。これは、おそらくですが、背圧がかからないことによるストレスフリーなユニットの動きによるものと考えています。平面バッフルの良さと同じですね。平面バッフルはバッフル効果が大きすぎて美しいステレオイメージは難しいですが、今回のTLS-03siは正面110ミリしかないので点音源でありながら、背圧がかからない方式ということと言えそうです。
低域の部分では想定した音になりませんでしたが、中高域は想定以上の素晴らしい音になっています。
そしてスピーカーから音が出ていないような鳴り方、それがJuveAcousticsとしてのスピーカー設計の目指すところですが、そこは想定外に達成されています。
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