TLS101 トランスミッション ライン スピーカー

スピーカー

トランスミッションラインスピーカー(以下TSL)というずっと興味はありつつ手を付けていないスピーカーがあります。簡単にいうと共鳴管式スピーカーの亜種といったところでしょうか。

ネットで検索するとどうもどれを読んでもピンと来ない。それTLSと言えるん?というものばかり。一体TLSとは?

海外のDIYではTLSとして上がっているものは、概ね吸音材詰めまくりのものが多いようです。日本のものは音道が一定でないものまでTLSとしていたり、吸音材ふわっと入れるだけのものもTLSとなっていたりと見れば見るほど定まりません。

で、結論としては、TSLとは共鳴管式スピーカーの一番低い基本周波数のみを活かし、その上の帯域の共鳴は吸音しよう、という考えた方と理解することにしました。

この理解のみで設計することにします。

一作目なのでざっくりとした設計でいきます。音道は全長約120センチ。これで69HZのみを増強する狙いです。その上の共鳴は吸音材でカット。

吸音材で音道を塞ぐイメージでいきます。吸音材はロックウール。そして開管部は背面にし吸音しきれない音漏れは後ろに流す設計です。

恐らくですが、共鳴管と迷路のミックスしたような動作になると考えています。

個人的にはバックロードホーンやそれに準じるバックロードホーンバスレフなど背面の音を積極的に利用するタイプのスピーカーは音像がピシっと来ないので好みではありませんが、このTLSは一番低い周波数(共鳴管の基本周波数)のみを利用する、というコンセプトからある意味バスレフに近いのではないかと考えています。背面の音を積極的に利用するタイプのスピーカーではない、と。

そこで低音が出にくい2インチのユニットで実験することにしました。

なので基本周波数を70Hz辺りにした設計にしてあります。そしてバッフルを最小にして奥行を取り内容積(音道)を確保するスタイルです。形状的には最もステレオイメージに有利なスタイルです。

100×200×300

これとほぼ同じサイズのスピーカーは何度も作っており、ノンダクトバスレフ式、通常バスレフ式どちらも形状からくる音の出方は把握しています。ノンダクトバスレフ式では鮮やかなステレオイメージが最も表現しやすいスタイルです。

さて、音は?

2インチのユニットでこの低域は凄いと言えるでしょう。

音が遅れるような感じはあまり気になりません。40HZの音にきちんと反応して音として再現しているので低域再生に関していえばかなりの可能性を感じました。共鳴管というより音響迷路の動作がこの重低音を実現しているように感じました。

さてステレオイメージですが、ノンダクトバスレフ式でこの大きさで作ったものと比べると、やはり音像は膨らんでいます。そして奥行き感も曖昧です。楽器の並びも曖昧です。良く出来た市販2ウェイ並みの音像と音場と言えます。フルレンジでこの音像と音場ではユーヴェ工房としては物足りません。

原因は?

中の吸音材をもっと詰めるべきだったかもしれません。背面下部からの音漏れが音像や音場を乱していることは否めません。側板はヒノキの無垢板14mmを使ったのですが、板材の強度が足りずに音像がボケてんのかと思い背面開口部を完全にふさいで再生してみたところ、低域全然でなくなりましたが音像はしまり音場も広がりました。なのでキャビネットの強度の問題ではなく、明らかに背面開口部からの音漏れが原因です。開口部はユニットから1メートル弱あり180度2回折り曲げていますし、吸音材たっぷり入っていますのでもっとしまった音像を期待していたのですが、期待したほどの音の出方にはなってません。

が、しかし、低域再生に関して可能性は感じます。音道をも少し伸ばし、折り曲げ回数を増やし、吸音材の量をもう少し増やせば低域を拡大しつつステレオイメージを再現できるかもしれません。が、音道を長くすれば音の遅れも気になってくるかもしれませんし、折り曲げ回数を増やせばもうそれは音響迷路なので低域は拡大出来てもアタックは苦手な音になりそうです。

TLSとしての一作目ですが、概ね成功と言って良いと思います。2インチでこれだけの音が出ればね。

 

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