これまでJuveAcousticsはオリジナルのBlockDuct(ブロックダクト)式をメインに開発しています。ダクトノイズが発生しにくいBlockDuctはバスレフ型のデメリットを極力低減する優れたバスレフ方式であると考えています。
BlockDuct式とは別にSolid Diceもありますが、Solid Diceシリーズはパッシブラジエーターを搭載した密閉型ですが、純粋な密閉型とは少し異なります。
これまで個人的には密閉型にはあまり興味を持てませんでした。あまり密閉型には良いイメージを持っていなかったからです。これまで私が所有して使っていた密閉型スピーカーは、ビクターSX-511にセレッションのSL-6si、ロジャースLS3/5A、ATC-A7あたりですが、みんな良いスピーカーでしたが、どこか少し残る物足りなさみたいなものを感じていました。
BlockDuct-A138siを購入して頂いたお客様で、音楽編集のお仕事をされている方がいらっしゃいます。そうです、プロがモニタースピーカーとして使って下さっています。
「大手メーカーではあり得ない強靭な造りのキャビネットによる、明確な定位、楽器の位置、距離、とても良く判りすっかりはまっています。」と音楽編集する際のモニタースピーカーとして通用するスピーカーであるとおっしゃって頂きました。
が、しかし。スピーカー間隔85センチのニアフィールドモニタースピーカーとして使う場合としては「低域が出すぎ」とのことでした。「60Hzとかの特定の帯域をいじるときに正確に聴き分けないとならない時にダクトの反位相の音が邪魔になる」と、流石のプロ的インプレッションに衝撃さえ受けました。
「なのでダクトに吸音材を詰めて準密閉の様な使い方をしています。」とのこと。私自身はそれを感じたことがありませんでしたが、お客様が編集している音源を送って頂き、同じ距離感で(ニアフィールド)で聴いてみましたが、なるほど、わかります、ダクトの音が目立ちます。さすがに卓上のモニタースピーカーとして手が届くような距離だとダクトからもりもり出てくる低域がユニットの音と上手くブレンド出来ていません。
「鬼高精度のブロックダクトは、ダクトからの音しか出さないため、ニアフィールドだとかえってダクトから出る音が目立ってしまうのだと感じております。」
BlockDuctではない通常のスピーカーは、箱が鳴き、ネットワークがありユニット以外の音がかなり出ています。そのおかげでニアフィールドだと逆にダクトのノイズがあまり目立たないのかもしれません。
ということで、ブロックダクトの強靭さを維持したまま密閉型のA138siバージョンを作ることになりました。
初めての本格的密閉型です。
ダクトがないので左右を連結する方法が問題になります。美しく正確なサウンドステージに箱なりは必要ありません。左右の側板を強力に連結してキャビネットをワンピース化する方法として考えたのが補強桟です。
キャビネットを構成する25mm厚のタモ材をくり抜いたものを内部に入れて左右の側板を一体化させることにしました。角材で組み合わせるより板材をくり抜くことでより強度を求める作戦です。
板合わせの写真ですが、このように内部に補強桟を入れ左右の側板を連結します。そしてくり抜いた部分に特殊な吸音材を入れています。これはアルミナの粉末で吸音効果が非常に高いものです。これはガラスコーンの発案者の日本電気硝子(NEG)の方が試作した挑戦的なものです。これをユニットの内側に出る音の直接あたる場所に設置しました。
これが今回の一番の肝になります。
合計3種類の吸音材で内部の吸音は万全です。そしてバッフルは138siと同じ50ミリ厚です。キャビネットのワンピース化という面では138siより上かもしれません。
そして完成したJuveAcoustics初のアコースティックサスペンションスピーカー。
色はリクエストによりダークウォルナットです。拳でキャビネットを叩くとコツコツととても良い状態です。
やはり音を通常の距離で聴くと138siと比べると低域が少し物足りません。しかし、密閉特有の詰まったような暗いような音は全くしません。内部の吸音がかなり上手くいっていて、バスレフに比べて高い内圧をしっかり受け止める強靭さがしっかりと音に現れています。そしてニアフィールドで聴いた時に今まで聴いたことがないレベルの音場の見通しの良さを感じました。非常にリアルな音像が浮かび上がります。これならご満足いただけるであろうということで早速ご依頼者のもとに発送しました。
以下、頂いたメールです。
「精度を上げると弱いところに皺寄せがいったり、それ由来の現象が起こったりと、ものづくりって本当に難しいですよね。できるだけ満遍なく使える物(コストも抑えながら)を提供する大手メーカーの製品は、良くも悪くも曖昧な部分があって、突き進めていくと(いく人にとっては)物足りなくなってしまう。比べないと気付かないですが、良いもの(自分にフィットしたもの)に出会うともう元に戻れない。そうなると既製品をベースにカスタマイズするか、ワンオフするしかないですよね。または、野上さんのようなスキルがあって、意見を真摯に受け止めて下さりつつ、突き進んだ勢いある方と運良く出会うしかない。勇気(散財も 笑)を恐れていたらこのような出会いは一生訪れなかった。
自分の感性と環境にマッチし、どのジャンルの音楽もこれこれ、と腑に落ちる音を届けてくれる138ですが、野上さんとの素晴らしい出会いと併せて、聴く度に有り難さを痛感しております!
驚いたのが定位と音飛びの秀逸さでした。定位感は過去一かもしれません。楽器の位置がさらに良く見えます。あと位相がとにかく素晴らしい。左右のスピーカーの向きが少しくらいズレようが、聴取位置がズレようが、ほとんど位相のズレを感じません。ダクトからの音の影響が無いことで、これだけ変わるのかと改めてびっくりしております。とにかく正確無比の鬼精度の世界です。
ご満足頂けたようでホッとしましたし、プロが使うミックスモニターとして通用するレベルに達しているということでスピーカービルダーとして更に自信を持つことが出来るようになりました。
ミックスモニターとしてもそうですが、この密閉型を通常使用したときに少し感じる低域の不足感はアンプのBASSを少し上げる事で簡単に解決します。密閉はこのトーンコントロールの使用による劣化がほぼないのがストロングポイントでもあります。
ただトーンコントロールを使わずとも十分な低域と感じる人もいると思います。トーンコントロールを使わない巣の音をyoutubeに挙げたので参考までに。
このスピーカーは受注生産でラインナップに加えることにします。納期は3週間前後をみてください。またその際に細かくご希望に沿うように変更も可能です。オーダー品ですので。
BlockAsh-ASN01si ¥288000(すべて込み) 完全受注生産
ご質問やご注文はお問い合わせからお願いします。
コメント
このスピーカーはPLUVIA 7と相性が良いと思います。比較のために、あなたのこのビデオを聴いています https://www.youtube.com/watch?v=ZkPucVMfn0c。
CHN 719 には多くの機能はありません。それは単にきちんと「プレイ」するだけです。