サウンドステージについてのコラム。BlockDuct-A138si.v3 と BlockDuct-A146si 

Juve工房

JuveAcousticsのスピーカーについて今一度ご紹介したいと思います。

音の佇まい、サウンドステージ、ステレオイメージについての話をします。

通常のスピーカーですと、低音がどうだ、とか、高域の伸びが、とか音の解像度が高いとか、そのような表現でスピーカーの音を表現することがほとんどです。これが日本ではずっと続いています。ステレオイメージの概念は2024年の現在に於いて我が国では未だ浸透していないと考えています。

細かい音が聴こえる!とハイレゾを持ち上げたり、音の質感や肌触りのようなものにばかり注目しがちであると感じています。

しかし、スピーカーによって、サウンドステージの現れ方に大きな違いがあることを訴えたいと思います。

美しくリアルなサウンドステージを提供するスピーカーの大きな特徴としては一言でいうと、”スピーカーから音が聴こえて来ない、スピーカーが鳴っているように感じない”ということになります。
音はスピーカーの間から後方にかけての空間から出るので、目の前にあるスピーカーが鳴っているように感じません。

良くある表現に定位感が素晴らしいスピーカーだ、なんてのがあります。昔はタンノイの同軸ユニットのプレステージシリーズなどで良く見られました。それは間違いないんです。定位感が素晴らしいのは事実ですが、その先にまだあるのです。定位感より上の概念とでも言いましょうか。ただ並ぶのではなくステージが見えるように空間に浮かび上がる音の世界があるのです。それがステレオイメージです。

ステレオイメージを鮮やかに表現できるスピーカーはあまりないのが現状です。このステレオイメージに最初に気づいたのは誰だかはわかりませんが、日本に最初に紹介したのはオーディオ評論家の傅信幸氏です。
時代的にはアナログレコードからCDに切り替わる80年代頃です。アコースタッドやアポジー、マーティンローガンなどが”箱がないスピーカー(つまり箱なりがしない)”を発表しだしたころです。

箱なりを排除したスピーカーとチャンネルセパレーションに優れたCDの組み合わせは、ボーカルの音像がふわっとスピーカーの間に浮かび上がる音の佇まいを見せました。

アポジーディーヴァ

当時の日本市場における2台巨頭、JBLのスタジオモニター類やTANNOYのプレステージシリーズでは表現できなかった音の佇まいを見せるスピーカーの登場です。

見事なステレオイメージを表現した箱がない平面衝立型のスピーカーは、残念なことに低音があまり出ませんでした。そのせいで廃れていきます。マーティンローガンなどは低域に箱型ウーハーを組み合わせたもので低域不足を解消したものを発表していましたが、現在は衝立型の面で鳴らすスピーカーは廃れてしまいました。栄枯盛衰は世の常であります。

ハイエンドの世界で平面型のスピーカー追いやったのは、箱型のスピーカーでありながら箱なりを排除し、美しいステレオイメージを表現するスピーカーの登場です。

平面型のスピーカーのおかげでステレオイメージを美しく表現するには、何が必要か、がわかってきたのです。

位相の管理です。

欧米では箱なりは位相を乱すことが理解された結果、箱なりを排除するスピーカーで美しいステレオイメージを表現する箱型のスピーカーが登場しだします。ウィルソンオーディオ、アヴァロン、ティール、ヘイルズなどがアメリカから登場しだし、いわゆるハイエンドオーディオ界を牽引しだします。これらの箱型のスピーカーは徹底的に箱なりを抑える工夫でステレオイメージを表現していました。それぞれの特徴を書いてたらキリがないので割愛しますが、JuveAcousticsのスピーカーの考えた方はアヴァロンに近いと思います。木の塊にして箱なりを抑えようというコンセプトが近いですかね。アヴァロンはマルチウェイスピーカーなので各ユニットの位相管理をバッフルをスラントさせて行っていましたけど。

アヴァロン

日本ではどうだったか?

当時の日本はダイアトーン、ビクター、オンキョー、デンオン、ケンウッド、ヤマハ、パイオニアなどが健在で30センチウーハーを基調とした3ウェイブックシェルフで戦争をしていてその戦争が終焉を迎えるころでしょうか。半年ごとに各社が新製品を出していたオーディオ全盛期のころですね。

やれマグネシウムだ、チタンだ、ボロン、ベリリウム、アルミに金蒸着だ、ダイヤモンドコーティングだと、素材競争しまくりの面白い時代でした。

しかし、肝心の音は?

円高の影響もあって日本に続々と入ってくる欧米のスピーカーメーカーにぶっとばされました。まずダイアトーンが撤退し、その後どんどんとなくなり現在ではオーディオ業界の衰退とともに日本製スピーカーは壊滅状態です。

単純に音楽性において完敗したからです。物理特性ばかり追求した末路です。日本のスピーカーメーカーの求めたものはライバル社より良い特性の製品でした。

これじゃいかんと気が付き反省しだしたのか、例えばパイオニアなどはヨーロッパ製のスピーカーを真似しだします。UKシリーズとかいって、これまでやってきた自社製品を全否定するかのようなスピーカーを出し始めたり、まー、迷走しだします。まあ、パイオニアに限らず生き残るためにこれまでの自社製品とは決別したかのように、海外製スピーカーの真似をしだしました。当然ですが、あれほど栄華を誇った日本のスピーカーメーカーはほぼ全滅です。

はっきり言います。日本においてステレオイメージについて理解し、そういう音の佇まい、音の表現を追求したスピーカーメーカーはありませんでした。

一つ象徴していると思うスピーカーを挙げます。ONKYOの桐スピーカーです。2017年に発表されたペアで120万円のスピーカーです。

ご存じの通りオンキョーはつぶれました。そらつぶれるわ、としか言えない内容です。120万で桐のスピーカー出すとか何もわかってない、としか言えません。

このように内部を加工し定在波が発生しません、アピールしています。和太鼓の響きに着目し日本人の五感に訴えるスピーカー云々です。

これ私は聴いていません。聴いてないのに批判すんなよ!という声が聴こえてきそうですが、聴かなくてもわかります。このスピーカーはステレオイメージを表現することは出来ません。断言します。スピーカーから音が出ていることがはっきりわかるスピーカーなのは間違いありません。

もちろん好き嫌いはありますし、スピーカーは良い悪いではなく好き嫌いの世界です。

しかし、はっきり言えるのはステレオイメージを表現することは出来ない、ということです。

30年前の発表なら、まー、理解は出来ます。ペア10万円なら理解できます。しかし、これ2017年の作品です。ペア120万円のハイエンドスピーカーです。

現代において、ハイエンドオーディオの世界はステレオイメージを表現できることが重要な要素です。もちろん、ステレオイメージに興味のない方は大勢いますし、そもそも日本ではステレオイメージについて知らない方がほとんどです。ですから日本においてはハイエンド=ステレオイメージ、という式は成り立ちません。

思うわけですよ、ステレオイメージが美しく表現されるスピーカーを普及させたい、と。

オーケストラを再生したときに、金管楽器の音が指揮者の位置から飛んでくるのはおかしいよ、と感じる方。

巨大なボーカルの口の中からピアノの音やベースの音が聴こえるのはおかしいよ、と感じる方。

ギターの大きさとベースの大きさが同じように聴こえるのはおかしいよ、と感じる方。そもそも、この大きさという表現に対して、音量ではなく楽器のサイズの大きさとすぐわかる方。

定位感が優れたスピーカーという評価だけど、横一列に並ぶのはおかしいよ、と感じる方。

そういう方は、位相に敏感な方たちです。JuveAcousticsのスピーカーを聴いたらば納得していただけると思います。

誤解なきようはっきり言いますが、良い悪いではありません。聴き手の特性みたいなものも関係します。位相に無頓着な人も多いのは確認しています。むしろ多数派かもしれません。
これだけ世界はステレオイメージについて普及しているのに、日本は全然普及していないことを考えると、日本人は位相について無頓着な人が多いせいなのかもしれない、とも思います。

狩猟民族は位相に敏感でないといけません。物音がどの方向にどれくらいの距離でしたかを判断するのに必要ですから。対して農耕民族はそういう聴力をあまり必要としません。そういう事も日本でステレオイメージが普及しない原因になっているのかもしれない、などと考えたりもしています。

もう結構な数のBlockDuctスピーカーを販売しましたので、最近たまにヤフオクなどで中古のBlockDuctスピーカーを見かけるようになりました。売りに出されたのを見ると少し複雑ですが、位相関係に無頓着な人だったのかもしれない、と思っています。

お前の耳はそんなにいいのか?と思ったあなた。良い悪いではないのです。私は位相には敏感ですが、音色には鈍いと思っています。私は以前に8桁万円をかけてハイエンドオーディオを揃えていました。ケーブル一組で今販売しているBlockDuct-A138siが買えるような世界です。比較視聴すると高いケーブルは確かに良いとわかり、どんどんエスカレートしていきました。しかし、ある時、スピーカーの比較視聴した際に長さが足りずに安い普通のOFCケーブルで聴いたことがありました。その後、極太ハイエンドケーブルに戻すのを忘れ翌日に音楽鑑賞。

うーむ、やはり今のシステム最高やな、と悦に入っていました。

そしてケーブルが極太ハイエンドケーブルではなくやっすいOFCケーブルであることに気が付く数日後まで、音を聴いただけでは私は全く気づきませんでした。

オレミミワルイノカナ?と悲しい気分になったものです。

しかし、寝ている間に地震があった時にー--私は地震があったことを全く知らなかったー--音を聴いてすぐにスピーカーがおかしいことに気づきました。音像がおかしい、と。

当時B&Wの801を使っていたのでマルチウェイです。ツィーターの位置はミリ単位で測りセッティングしていました。

そこでツィーターの位置を測定してみると、右が3mm前方に出て、左が5mmほど後退していました。「誰かスピーカーになんかしたか?!」と家人に聞いても「触るわけない」と。「スピーカーの位置が動いてんだよ!」というと「夜中地震あったからね、そのせいじゃない?」との返答。

オレミミイイナ!

因みに妻は位相には無頓着ですが、耳だけで電源の極性を正確に聴き分けます。私はテスター使わないと無理です。

人それぞれの耳の特性があるようです。

長々と書いてきましたが、上に書いたような「指揮者の位置から金管楽器聴こえるのおかしいよ」と感じるような私の耳に似ている方は、JuveAcousticsのスピーカーをおすすめします。期待を裏切ることはありません。

日本においてはステレオイメージについて傅信幸氏以外は評論家でもあまり言及していませんので、オーディオ誌でもほぼ無視状態です。日本人は位相に無頓着な人が多い可能性はあります。しかし、ただ、知らないからというだけで、位相管理されていないスピーカーで満足しているケースもかなりあるのではないかと思うわけです。それは私のスピーカーを購入していただいた方の喜びのお声を聞くと、その思いを強くするわけです。

潜在的な位相に敏感な人たちです。その方たちに私のスピーカーを聴いて欲しいのです。

スピーカーから音が鳴るのではなく、空間から音楽が聴こえてくる、そんな音の佇まいを表現することに全力で取り組んだ結果がBlockDuct-A138siでありBlockDuct-A146siです。

空間から音が聴こえると、そこにあるのはただ、ただ音楽のみです。

 

 

 

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