JuveAcousticsとしてブロックシリーズを正式に販売開始いたします。
ようやく完成しましたので2種類あるnonDuct-B130siをご紹介します。白タモ材を全面に使った”The Block Ash”とブナの無垢材を全面に使った”The Block Beech”です。
まずはnonDuct-B130si”The Block Ash”です。
”The Block Ash”のAshはアッシュ材、すなわちタモ材です。白タモの集成材を使ったモデルになります。野球のバットにも使われる硬くて粘りのある材でスピーカーのキャビネットとしてステレオイメージを追求する場合とても適した材と考えています。
nonDuct-B124siのオリジナルはもともと針葉樹の柔らかい夏目と硬い冬目の特徴を活かした設計でキャビネットの存在を音に反映しない、スピーカーのSN比が非常に高いリアルなサウンドステージを高次元で表現できる会心作でした。
硬い広葉樹は堅さゆえの響きが音に乗ります。そして市場に出回っているほぼすべてのスピーカーメーカーは板材の鳴きを諦めています。どうせ乗るなら綺麗に響かせよう、と折り合いをつけたりしています。もちろん、良い悪いの問題ではなく設計思想の問題です。
また出回っているスピーカーのほぼすべてが合板やパーティクルボードなどでキャビネットを作っています。合板は薄い薄い板を接着剤で固めたものです。その一枚一枚はペラペラで手で引きちぎれる薄さです。それを大量の接着剤で固めたものです。はっきり言って合板は接着剤そのものと言って良いのです。板の響き、とうたってもそれは接着剤の響きと同意です。
またパーティクルボードなどは細かな木くずを接着剤で固めたもので、これも接着剤そのものです。
接着剤の塊みたいなものがキャビネットになっているのです。音に良いわけがない。
なのに何故多くのスピーカーが接着剤のキャビネットを採用しているのでしょうか?
美しい外観を低コストで簡単に制作するため。
製品のばらつきを抑え、均一な美しさにするためです。それを低コストで達成するためにはパーティクルボードでキャビネットを作成し、突板を貼る事で容易に出来ます。突板ならまだマシで木目模様のビニールシートを貼って綺麗に仕上げているスピーカーばかりです。
ブロックシリーズを製品化する際に木工所と何度も打ち合わせする中で、「パーティクルボードで突板貼れば安く綺麗に出来るよ。これ(進めている無垢材キャビネット)より、見た目綺麗に安く出来るけど、それじゃダメなの?」と言われました。
そんなキャビネットは世に溢れているので私が敢えて製品化する意義はなにもありません。既に有名スピーカーメーカーで魅力的なものが沢山あります。
少し話が逸れましたので戻します。硬い広葉樹の話です。硬い広葉樹でスピーカーを作る場合その堅さゆえに響きが音に乗ります。楽器のようにスピーカーを作成し大成功しているスピーカーも沢山あります。響きが音に乗るのでウォルナット材やマホガニー材など美しい響きの高級材を使ったスピーカーは数少ないですが人気があります。マークオーディオのフィデリティムサウンド社が出しているネイチャーコレクションのウォルナットモデルやメイプルモデルはびっくりするほど美しい作りと素晴らしい音で大人気です。
キャビネットの響きを綺麗に音に乗せるスピーカーも素晴らしいですが、ユーヴェはとことん3次元的に浮かび上がるサウンドステージを追い求めています。そのためのnonDuct-B124siでは針葉樹を分厚く用いてキャビネットの鳴きを徹底的に排除しました。その結果出てくる音は眼前に浮かび上がるリアルなサウンドステージでした。
しかし、欠点が一つありました。美しい仕上げにならないことでした。荒く柔らかい夏目と硬い冬目が接着剤を使わない天然の合板のようになっている針葉樹によるnonDuct-B124siThe Block Originalは音は良くても仕上げがどうしても美しくなりません。突板を貼って美しく化粧を施すか?と考えましたがどうしても納得がいかずに、美しい仕上げにするために広葉樹を使ったノンダクトバスレフ式によるブロックシリーズの開発に着手しました。それがこのnonDuct-B130siです。
まず第一に内部構造は全く同じにする。完成度が高い124siなので内部構造は全く同じでいきます。その上で板材の選定と厚みです。最終的に残ったのがブナ材と白タモ材です。硬さゆえに響きが再生音に乗るという問題を解決できるのかが一番の問題です。
最終的には両側板を30mm、それ以外のバッフル、背板、天板、底板を35mmにしました。nonDuct-B124siは38mmでしたが35mmです。このブロックシリーズはその内部構造のおかげでこれ以上ない強靭さを誇ります。硬い広葉樹を35mm厚で使うなどという前代未聞のキャビネットは世界に例をみません。32mm厚のオーク材で作られたものがヨーロッパの某メーカにありますがトールボーイ型で大きなスピーカーです。この小型スピーカーで35mm厚のものは私の知る限りは他にはないと思います。前代未聞のド級キャビネットと言えます。
そして肝心の音です。白タモ材のThe Block Ashとブナ材のThe Block Beechの音についてご紹介します。
これまでのオリジナル124siとはユニットが異なります。採用しているユニットは同じマークオーディオ製のユニットになりますが、最大の特徴がモノサスペンションのユニットでダンパーがありません。ダンパーレスで正確に振動板を保持・ストロークさせる事が出来る精密なユニットです。静けさが表現できる稀有なユニットです。強靭な木の塊のようなキャビネット構造との相性はベストと断言できるほど、このユニットが持つ繊細感と静けさを遺憾なく発揮出来ています。
しかし、欠点もあり大音量は苦手です。ブロックシリーズは小型ですが40Hzから再生できるキャビネットなので40Hz以下の信号が多く含まれるソースで大音量再生するとボトミングを起こしてしまいます。映画などは20Hzの超低音が含まれていますが、このようなソースにははっきりって不向きと言えます。唯一の注意点です。
しかし、この欠点を補って余りある魅力があるユニットです。生の楽器を使った音楽、クラシックやジャズなどは、生々しい演奏の熱気までもが再生されてると感じられるほどです。そしてスタジオ録音などはスタジオの静けさまでもが表現されます。教会録音のロストロポーヴィチのバッハの無伴奏チェロソナタを再生すると教会で録音されたことがよくわかります。この辺りの表現力は非常に高く、音はハイエンドスピーカーの佇まいそのものです。
スピーカーの存在を消し再生ボタンを押すと演奏者が眼前に現れる、そんなスピーカーがユーヴェの理想とするスピーカーです。これはオリジナルnonDuct-B124siで達成できていました。
しかし、このnonDuct-B130siの2モデルは更に磨き上げた音になっています。キャビネットの剛性が飛躍的に上がったことと、ダンパーを排することで安全性までを放棄し音の鮮度と繊細感を究極まで求めたユニットにより到達できた高み、それがThe Block BeechとThe Block Ashが奏でる音です。
The Block AshもThe Block Beechもどちらも同じレベルにあり、違いはキャビネットの材質のみです。ブナの無垢材は白タモより密度が幾分高くより硬い木材のせいか、35mmという分厚い木材でもその硬さゆえの響きが少し音に乗っています。ほんの少しですが、シンバルはすこし輝かしくなり、音の減衰が早く抜群の音離れを見せてくれるので解像度が非常に高く感じます。音のエッジも立ちまさに見えるように演奏者が現れます。
対して白タモはより静かです。ブナのような高域にのるキャビネットの音の輝きみたいなものは少なく、ユニットの音をどれだけ純粋に出しているか?ということに関しては、白タモの方が幾分上と言えます。低域の充実度で言えば白タモの方が気持ち上のような気がします。
しかし、いま述べた音の違いは瞬時切り替えの比較視聴を繰り返してようやく差を見つけられるレベルの微小な差でありF特上に現れるような明確な差ではありません。全く同じ構造のキャビネットに全く同じユニット(振動板の色違い)なので、むしろThe Block Beechに取り付けているゴールドの振動板の色のイメージよる部分もあるかもしれません。
小型スピーカーの最大のメリットは点音源化を狙いやすいということが挙げられます。少なくともユーヴェではそう考えています。スペースファクターが良いとか一般的なスピーカーメーカーが考えるメリットは考慮していません。小さな口径のユニットをユニットが取り付け可能なギリギリの幅のバッフルにして徹底的にバッフル効果を排したキャビネットは美しくリアルなサウンドステージを表現する最適な手段です。
デメリットは?それは低域再生が困難なことです。しかし、ユーヴェはノンダクトバスレフ式と命名したキャビネットとダクトを一体化させる独自の方法でこれを解決しています。ダクトのチューニングは63Hzです。通常の筒状のバスレフダクトで3インチのユニットで63Hzまで下に持っていくと120~130Hzの音が凹んでしまいますが、ノンダクトバスレフ式では凹まずに40Hzからフラットに再生できます。そしてダクトノイズがなく明瞭で正確な低域、ベースの正確な音程がはっきりわかる解像度の高い音が表現出来ます。
もちろんフルオーケストラを大音量で再生したときに600万円するB&Wのスピーカーのような世界は無理です。3インチのユニット一つですから、さすがに対抗できません。しかし、ことステレオイメージに関して言えば、対抗できるどころか勝っています。ジャズのトリオやボーカルもの、クラシックの室内楽など、そのリアルな音像の表現は勝っています。
私自身B&Wのmatrix801S3というモデルを長くメインシステムで使ってきました。バッフル効果を排したそのスピーカー設計のメソッドは私に大きな影響を与えています。
nonDuct-B124siを購入していただいたお客様から、似た設計思想のスピーカーメーカーが海外にあると教えていただき、そのHPを見て知ったのですが、B&Wの創業者ジョン・バウワー氏の言葉です。
「最高のスピーカー設計にはドライブ ユニットが 1 つだけ必要ですが、1 つで構築できない場合は 2 つ使用してください。2 つで構築できない場合は 3 つを使用します。3 つ以上必要な場合は、デザインを変更してください。」
今は亡きバウワー氏から、おまえのスピーカー設計思想は正しいぞ、それでよい!と言われた気がしました。シングルコーンで設計できないから2ウェイ、3ウェイにいく、そう理解して良いでしょうか。
そして上記に書いた600万円のシステムはユニット4つやんけ!と心の中でB&W現設計陣に突っ込みをいれたりしていました、が、その音は素晴らしいことは否定しようがありませんけど。
nonDuct-B130siで採用したユニットはフレームが厚みがあるため落とし込み加工を施したのですが、バッフル最小で設計したためにフレームが側板にかかっています。そのため組み立て前のバッフルに穴をあける際に落とし込み加工をすることが出来ません。組み立て後に手作業で落とし込み加工を施さねばならずに制作を依頼した木工会社さんには苦労をかけたところです。が、しかし、苦労の甲斐もあり美しく収まりました。
長々と書いてきましたが、ユーヴェが考える究極の小型スピーカーがこのnonDuct-B130siの2モデル、The Block BeechとThe Block Ashです。
貸出機を用意しました。この音を体験してみたい方はお問い合わせから申し出てくださいませ。無料です。聴いたうえで購入していただく場合は送料も無料ですが、好みではなく購入しない場合は往復の送料だけご負担をお願いします。
現在、直接サイトから購入できるようにカートなどの設置の準備をしていますが、完成するまで発表記念としてお安く提供します。
The Block BeechとThe Block Ashともにお安く提供しますが、貸出の件とともに別記事にてご案内する予定です。
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