はじめに

オーディオ歴云十年というベテランならわかっていることですが、ネット界隈、YOUTUBEなどを見ていると皆が分かっていたことが浸透していないと感じる事が多いので数回に渡って知っておくべき基礎知識を記事化していきます。具体例を一つ挙げると、YOUTUBEに創〇の館というチャンネルがあるのですが、オーディオ界にとって最早害悪といえるほどのいい加減な解説をしているのを見て呆れました。悲しいことにコメントがよくわかりました!というものばかり。今やオーディオは寂れた趣味になりつつありますが、この素晴らしい趣味に興味を持って正しく理解して貰えるようなHPを目指すつもりです。

好きな音楽を良い音で聴きたい。

これがオーディオの出発点と思います。出発点はそこですが、そこから色々複雑に派生しているのも事実です。オーディオ黎明期には原音再生こそ正しいオーディオの在り方である、という事から、音楽ではない列車の音や花火の音、街中の音などをいかに高音質で生録音しいかに生々しく再生するか、というオーディオ趣味が一大勢力といえるほどのメジャーなものであったりもしました。

国内のオーディオ機器メーカーが電機産業の中心にいた頃です。ダイアトーン、オットー、オーレックス、コーラル、ナカイ、ナカミチ、LO-D、ONKYO、サンスイみんな消えた日本のオーディオブランドですが、残っているように見えるDENONも日本企業ではありません。

これらのオーディオブランドに今も残ってるソニー、ヤマハ、テクニクスなどが、しのぎを削っていて、オーディオは、今では信じ難いですが、テレビとともに家庭の中心に居座る重要な産業でもありました。

少し話を戻します。原音再生こそオーディオの真理的な思想はこの時代確実にあったのです。各社その思想を基に開発を続けていました。入力の波形と出力の波形を近づけていくことが理想だと考えられていました。当然と思います。入力はアナログ信号であり、そのアナログ信号をそのままの形でスピーカーから出力することは非常に困難であり、高度な技術が必要です。その技術を完成させるべく各社、カートリッジからアナログプレーヤー、カセットデッキ、FMチューナー、アンプ、スピーカーと本当にしのぎを削って開発競争が為されていました。

この当時の影響が少なからずっと影響し続けることにまります。

未だにその影響を受けている典型例はスピーカーのf特です。わたしもスピーカー設計をしますからf特は確認します。f特は重要ですしスピーカー制作における一つのツールになります。

しかし、この波形重視のオーディオ開発が何を招いたのか?そこを考えて欲しいのです。日本のオーディオ産業の没落を招いたのはこの波形ありきの開発姿勢と言わざるを得ません。

オーディオの本質はあくまでも好きな音楽を良い音で聴きたい。これが一番大事なのです。

消えた日本のオーディオブランドすべてがこの一番大事なマインドがなかったとは言いません。しかし、オーディオ製品を開発するうえでこのマインドを第一にし、それを達成する上での手段として原音再生や波形主義を使っていたのであれば、日本のオーディオブランドが没落することはなかったと思っているのも事実です。

80年代には日本のオーディオブランドは世界で覇権を取ります。開発競争の結果、入力波形と出力波形の一致という点において世界一の技術力を持っていました。しかし、バブル崩壊後90年代に入ると見るも無残に衰退の一途を辿ります。

この崩壊の原因は、様々あると思います。デジタル技術の登場もその要因の一つです。しかし個人的に思う最大の原因はバブル崩壊後の円高です。円高になり日本のオーディオ界に海外製のスピーカーがどんどん入ってくるようになりました。それまではJBLやタンノイの両横綱が高額機として君臨していましたが、その他はメジャーな存在ではありませんでした。

ソーナスファーベル、ハーベス、セレッション、KEF、B&W、ロジャースなどのヨーロッパ製のスピーカーが頑張れば手に入る値段で日本に紹介され始めます。そしてあっという間に音楽聴いて楽しいぞと広がります。オーディオ誌でも普通に紹介され始めるようになり、評論家の絶賛コメントが並び始めます。(これは輸入元の営業努力もあるとは思います)

ここで日本のオーディオメーカーはどうしたのか?突然方向転換しだします。ヨーロッパの音楽性豊かな音を出しますよ!と。典型的なのはパイオニアが出した型番の後ろにUKとつくモデルです。

思いますよね?今までの設計思想はどこ行ったの?イギリス人が設計したアンプ?

音が良いとか悪いとかの話ではなくて、如何に日本のオーディオメーカーは信念が欠如した開発をしていたかという事を如実に物語る出来事の一つです。

こうした動きはパイオニアに限らずに他メーカーにもどんどん出てきます。

高剛性を歌ってたスピーカーが主流だったのに、板厚を敢えて薄くして美しく響かせてます!とか言われても、そりゃハーベスだろ!と突っ込まれるだけの話です。

こうしてまずダイアトーンが撤退し、それ以後どんどん日本のオーディオメーカーは衰退していく事になります。

また話を戻します。好きな音楽を良い音で聴きたい。

おそらく一番大事な事を忘れてはいけないのです。オーディオとはまず最初にこの目標を掲げて、技術的なことはこの目標を達成するために手段として使う道具でなければなりません。

日本のオーディオ界を支えていた技術者たちはこのことが分かっていなかったと思うし、引退してブログやYouTubeで発信している元技術者達はわかっていないまま発信しているとしか思えないものが見られます。このブログを読んで頂ける読者の方たちがこの辺りの事情を自分なりに解釈して自分の判断基準を持つようになる手助けとなればと思っています。

 

コメント

  1. 三毛にゃんジェロ より:

    こんにちは。

    オーディオに関してよく「音の良し悪し」という言葉が使われますが、実際に皆が議論しているのは「音の好き嫌い」だと思うのですよ。
    まず、音を聴き取る器官としての耳の構造・特性、聴覚神経、脳の聴覚野はそれこそ一人一人違うものだし、それに加えて音楽的な嗜好性や音の嗜好性、さらにはルームアコースティックや使用機材の特性、音源の種類や質まで考えたらもう、誰が聞いても音が悪いというものを除けばあとは単に各人の聴覚と好みで比較しているだけだと思います。
    ただ、それらの要因を整理せずにただ自分の好みに合わない音のものを音が悪いと表現しているだけかなと。

    自分なりの基準や音の好みをしっかりと把握していれば、他人の評価に惑わされることなく自分の好きな音を追求していけばいいんだと考えています。しかしながら、それに合ったスピーカーを作ることが実際にできるのかというのが一番の問題ではあります。予算が限られる中で試作品を何種類も作るというのは不可能なので、もう一発キメ打ちのギャンブルばかりです。

    • juve juve より:

      音の良し悪しと、音の好き嫌いの関係、まさにおっしゃる通りですね。

      まさにその通りなんですが、難しいのは「原音」という概念がそこに入り込んでくる事でしょうか。
      オーディオの出発点である、HiFiという概念はいかに原音に忠実であるか、でした。
      原音再生なんて言葉があったので良い音の基準が存在していましたが、
      いまではもはや原音再生なんて言葉はほとんど聞きませんよね。
      しかし、やはり絶対的な良い音というものが存在しているのではないか、
      なんて思いがオーディオマニアの中に残っているのかもしれません。

      HiFiという言葉がオーディオの中核をなしていたころはオーディオ店でいろんな機種を聴き比べるのがとても楽しかったです。
      初級、中級レベルのオーディオ機器であっても、です。
      しかし、最近は違いはあっても昔に比べたら初級、中級レベルのオーディオ機器は、その違いは極小な気がしています。
      AとBの違いは使いこなしで寄せられる、レベルの違いくらいになってる気がしています。
      ハイエンドオーディオはまた別ですけど。

      ハイエンドオーディオはHiFiはクリアされてる、というのが前提にあり、
      今では音像が3次元的にホログラフィーのように浮かび上がるようなステレオイメージ再生が主流になってきています。
      そういうオーディオをやっている人は浮かび上がらない再生音にダメ出しをしますし、
      そういうオーディオに興味のない音色重視の方とか、音が前に飛び出るような音を好む方はステレオイメージ再生を受け付けません。

      色んなオーディオが存在してしまっていることも一つの原因かもしれません。
      そしていろんなオーディオの在り方が知られていない、というのも原因かもしれません。

      なかなか難しいテーマです。
      難しいので話にまとまりがなくてすみません^^