何度かハイスピードサウンドについてお話していますが、今一度改めてハイスピードサウンドいう言葉を使ってその音の特徴を解説します。
JuveAcousticsが提唱しているステレオイメージを実現するために一番重要なことは、一言で言うとこのハイスピードサウンドになります。
ハイスピードサウンドという言葉のイメージをどんな風にお持ちでしょうか?
最近ネット上で、それはハイスピードサウンドじゃないよ、と思うものが散見されたので今一度ハイスピードサウンドについてちゃんと書いておこうとなった次第です。
スネアの音がパーンって気持ちよく飛んでくる音?
立ち上がりが早く感じる音?
そもそも音にスピード差なんてないのにハイスピードサウンドって表現はおかしな話です。
湿度も気温も低い場合と高温多湿な場合では確かに音速に差は出ますけど、そういうことではありません。
どうもネット上の書き込みを見ていると、打楽器系の立ち上がりの音の解像度が高い音をハイスピードサウンドとイメージしている方が多いように思います。しかし、それはハイスピードサウンドではありません。あくまで立ち上がりの解像度が高い音です。
音の立ち上がりに対して音の立下り?減衰速度も音の「速度感」に影響します。
■ JuveAcousticsが考えるハイスピードサウンドとは
それは、音が空間に“発生”するように聴こえるかどうかということ、いわゆるステレオイメージが表現されているかということ。
スピーカー自体から音が聴こえるのではなく、音像が空間に浮かび上がるように空間から音が聴こえてくるような音の佇まい。それがステレオイメージであり、「ハイスピードサウンド」なのです。
■ BlockDuct-AG146siをはじめとするJuveAcousticsのスピーカーが目指したもの
その鍵となるのが、音の立ち上がりと立ち下がりの制御です。
多くのスピーカーは、音のエネルギーを出すことには長けていても、音を止めることができない。多くが音の立ち上がりにばかり注目しすぎているのです。
ユニットが信号通りに動き止まる。この止まった時がハイスピードサウンドにとって重要なのです。
★キャビネットが鳴いていない事。これはキャビネットの鳴きを最小限にすることが重要なので、ブロックダクト構造と左右の側板を連結しダクトに高効率で空気を流すJuveAcoustics独自の強靭なキャビネット構造で解決しています。とにかく私が作るスピーカーは強靭なキャビネットを持っています。
左右の側板を斜めの板で連結してキャビネットをワンピース化する方法は、フィデリティムサウンドのスピーカーでも取り入れ始めています。他、ヤフオクでも「斜めの板が左右の側板を連結してキャビネットを強固にしています」、なんて私が書いたような文言の売り文句でキャビネットを販売しているところも出てきているようです。
★キャビネット内に出た逆位相の音は方向感覚が鈍いfd付近のダクト共振音のみを利用し、それ以外の音はしっかりと吸音する事。
理想はB&W時代のローレンス・ディッキー氏が開発したノーチラスの逆ホーンにすることで音を減衰させ熱変換させて消音するという方法。天才や。
JuveAcousticsは1/50の値段で達成するためにそんな大掛かりなことは出来ませんので、丁寧に内部に吸音材を貼ることで可能な限りの消音に成功しています。内部構造が複雑なために組み立て前に吸音材を全面に貼らなければならないのが制作を困難にしている原因ですが、ここは音にとても重要なポイントなので手を抜かずに丁寧に行っています。
★バッフル効果(やバッフルステップ)を極限まで減らす点音源が理想。
BlockDuct-AG146siをはじめとする落とし込み加工を施しているモデルでも、バッフルを左右の側板で圧着する構造です。点音源化を徹底するために幅をユニットぎりぎりに設計しています。そのため落とし込み加工が側板にかかってしまうのです。これは組み立て後に落とし込み加工を行わなければならないことを意味しています
。
組み立て前に落とし込み加工が出来るバッフル幅にすれば制作は楽になるのですが、こういうところでも一切の手抜きをせずに理想のキャビネットを追求します。
これらはいわゆる位相管理でもあります。位相を乱す原因となるものを可能な限り排除する事を徹底して行って理想のキャビネットを追求しているのです。
この位相管理を徹底していくと、結果として、ステレオイメージを鮮やかに提示するハイスピードサウンドが生まれます。
JuveAcousticsのBlockDuctは、音の立下り(立ち上がりに対して)、減衰特性を追い求めたキャビネットと言えます。静けさを表現するキャビネットです。
■Alpair5Gの誕生
工場の方ではほぼ完成し出荷がそろそろ始まるガラスコーンユニットですが、このAlpair5Gの売りは何といっても減衰特性が抜群に良いという事です。これが音のキレに繋がっているのです。
そうJuveAcousticsが追い求めた音とAlpair5Gの音はこれ以上ないというくらいにベストマッチなのです。ガラスコーンユニットの発案者のA氏と最初にお会いしたのはもう1年以上前になりますが、その時に「おそらく野上さんのブロックダクト方式とガラスコーンは相性がとても良いと思うので是非ブロックダクトで設計してください」と言われたのですよ。
本当にステレオイメージを理想的に再現するベストマッチの組み合わせになりました。
これこそハイスピードサウンドです。
音楽が、部屋を満たします。
たとえば、ビル・エヴァンスのピアノ。
鍵盤を叩いた瞬間のアタックが空間にふわっと立ち上がり、
その直後に訪れる減衰が、空気の中に吸い込まれるように消えていく。
そして、クラシック――たとえば、ベルリン・フィルによるマーラーの5番。
冒頭のトランペットが弦楽器群の奥の空間から鳴り響き、
そして金管楽器群の前に位置する弦が静かに、しかし確実に“空間を満たしてくる”あのホールで聴くライブの感覚。
音が層を成して前後左右に展開し、ホールの空気ごと再現される。倍音成分を正確に再現できるからこそのリアルなサウンドステージです。
これが、ハイスピードサウンドの真価であり、
このスピーカーが目指した“音の在り方”です。
BlockDuct-AG146siの設計は、徹底的に“速度”と“静寂”を追求した結果なのです。
- Block構造による定在波の排除
→ エンクロージャー内部を左右の側板を一体化させる斜めの板で分割し、不要な共振と定在波を根本から断つ。 - 筒状ポートレス設計(BlockDuct方式)
→ 筒状ポートによる位相ズレや遅延を排除し、音の立ち上がりと立ち下がりを極限まで正確にしています。ダクトの入口出口が世界で唯一同形状です。 - ネットワークレス構成
→ 信号経路を短縮出来るシングルコーンのためアンプからのエネルギーをダイレクトに伝える。
位相管理にとっては必要悪でしかないコイルやコンデンサーを排除。これにより、音像の“にじみ”を排除しています。ネットワークによる位相ずれが原理的に起こりません。
■ 音ではなく音楽を愛するすべての人へ
BlockDuct-AG146siで音を出し始めると起こること。次々と好きなディスクをかけることになります。あの好きなディスクがどんな風に聴こえるのだろうか?と。
これは視聴会を開いた時に実感したことです。これを聴きたい、が会の終了まで続きました。
この音を聴いたとき、あなたの中で“スピーカー”という概念が一度壊れるかもしれません。たったの20万円ほどで買えるハイエンドの音ですから。
■ 完成品:Alpair5G搭載 BlockDuct-AG146s

BlockDuct-AG146siのキャビネットのみ

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