ステレオイメージ再生について

audioの基礎知識

私がステレオイメージについて興味を持ったのは30年ほど前のオーディオ評論家の傅信幸さんの記事でした。私にとっては評論家というよりオーディオエッセイストですが、氏の書く文章が若かった私にはとても魅力的でした。AVフロントやステレオサウンドなどで氏の文章を毎号楽しみにしていたものです。

海外のオーディオショーに取材に行く氏の記事が、オーディオ的ロードエッセイになってしまうのですから、当時のオーディオ各誌においては異色の存在でした。

当時の雑誌はみな処分してしまい残っていませんが、海外取材の記事が、「こうして僕はまた旅を続ける」なんていうようなセリフが自然にそして当たり前に取材記事として掲載されてました。

そんな氏の書く文章に魅せられたら興味を持つのはステレオイメージです。

前置きが長くなりましたが、そうです、ステレオイメージです。

ステレオイメージは定位感とは少し違います。このステレオイメージは体験するまでなかなかわかりにくいのが困ったところです。私自身も傅信幸氏の提唱するステレオイメージを理解するまで数年かかりました。理解したのは実際に美しくステレオイメージが再生されているシステムの音を聴いてからです。

しかし、今日はこのステレオイメージについて私になりに説明したいと思っています。

まずは音場の出方についてです。赤の斜線部分が音場です。

音場A

このように目の前で軸上が交差するようにセッティングした場合、赤い部分に音場が広がっていませんか?一般的な市販スピカ―はこんな感じで完璧にセッティングしても音場はこのような感じになると思います。優秀なスピーカーで少し壁の奥にはみ出る程度です。

しかし、スピーカーの位相が完璧に揃っていてスピーカーのSN比が高ければ以下のように音場は広がります。

音場B

壁の存在が消えます。壁の奥に広がっていきます。

そして次に音像の出方についてです。昔の598戦争時代の3ウェイ大型ブックシェルフとか、解像度は高くワイドレンジで繊細感もある優秀なスピーカー目白押しですが、出現する音像の定位感はこんな感じです。

音像A

きちんとそこに定位しているんです。定位感はばっちりです、というのが当時の日本のオーディオ界です。メーカー含め評論家もすべからくこの状態を良しとしていました。そして現在もこの状況が普通に続いています。音場Aと音像Bです。

そしてこういう音の出方のスピーカーに対して、入口やアンプ、ケーブルなどを良いものにグレードアップしていくと、イメージとしては以下に進化します。

音像B

解像度が上がっていくと当然こうなりますが、音場はAのままです。これはこれで気落ちの良い音で私も好きです。突き詰めていくと上の下手なイラストが写真のように進化し楽器が見えてきます。JBL43シリーズなんかが典型と思っています。

ではステレオイメージ再生が得意なスピーカー、音場Bを展開する優秀なスピーカーの音像はどうなるのか。

音像C

このように見えてきます。そしてこのイラストが写真や3D映像のように見えてきます。私の絵では表現できずフリー素材のイラストを使いましたが、実際はイラストではなく奥行表現がわかる立体的な音像になります。そしてこの音像が壁の奥に見えるように出現します。そしてお気づきでしょうか?音像Aと音像Bにはスピーカーが見えていますが、音像Cにはスピーカーの存在がありません。

ステレオイメージ再生とはこのような音の佇まいなのです。

まず一番大事なのはスピーカーなのですが、このような再生能力のあるスピーカーでもアンプによっては音像Aや音像Bになってしまう事もあります。

私が経験したステレオイメージ再生に不向きなアンプとしては、設計者が音色第一の場合の真空管アンプ。真空管アンプがダメなのでありません。オーディオリサーチは真空管でも素晴らしいステレオイメージを出現させています。しかし、多くのガレージメーカー、そこそこ有名な真空管ブランドのアンプでもステレオイメージ再生が不向きなものもあるのが現実です。音像Bで写真のように見えるタイプの美音だったりしますが、音場Bの音像Cは苦手だったりします。

私が実際に所有し使ったアンプの中で有名どころではサンスイのAU-α907DRがステレオイメージ再生には不向きなアンプでした。高い解像度や繊細感、凄い馬力があったアンプですが、スピーカーからパッと音が離れてスピーカーの存在が消えるようなステレオイメージ再生は苦手なアンプでした。

もう一つソニーのTA-F333ESXも素晴らしいアンプですが、ステレオイメージ再生は苦手なアンプのイメージです。

石を沢山パラって出力上げている日本製のアンプは、馬力はあるし解像度も高いしそれでいて繊細感もあるのにステレオイメージ再生は苦手だったりします。

サンスイの907は既に手放していますが、ソニーはまだ手放していないので安いデジタルアンプNFJのFX-98Eと比較視聴しましたが、全ての面で比べ物になりませんが、ことステレオイメージに関してだけはなんとFX-98Eの圧勝でした。とはいえ、どちらのアンプを使うか?と問われればソニー使いますけどね。音像の出方以外の部分がソニーが優秀過ぎますから。

このように一筋縄でいかないのがステレオイメージ再生です。しかし、これを一度体験したら病みつきです(笑)底なし沼にはまって30年、抜け出せません。抜け出すつもりはないんですけどね(笑)

市販スピーカーでこのステレオイメージ再生のトップランナーはウィルソン、アヴァロン、ビビッド辺りでしょうか。

そしてnonDuct-B124siですぜ!いや、型番の最後にsiつけてるユーヴェ工房のブロックシリーズは全てですぜ!

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