オーディオにとって一番重要な事の一つが自分の音の好みを知るという事です。
スピーカーが100セットあれば、100通りの音があります。私はどれもこれも好きなのですが、自分が所有するスピーカーには明確な好みがあります。
低域が豊かである事、位相が揃っている事、スピーカーのSN比が高いことです。そして左右のスピーカーの奥に演奏者が配置されるような音場を形成するようなスピーカーが好きです。
大事なのは自分の音の好みを把握することと思います。それには好きな音楽をどう聴きたいのかを明確にする必要があります。この部分は人により様々ですし、正解などない世界ですので具体的にどう把握すべきかを説明することは困難です。
ですので、ここは私自身が音の好みをどう把握するようになったかをご説明したいと思います。
私がオーディオにのめり込むようになったきっかけの一つがオーケストラにおけるコントラバスやチェロの音をしっかり聴きたいというものです。最初のシステムで、それは中学生の頃ですが、オーケストラの曲を聴いていると、低弦楽器の音がぼわーんとなって音程が良く聴き取れません。Victorのzero5という30センチウーハーを使ったバスレフ型3ウェイのスピーカーでした。
これです。このスピーカーをサンスイのプリメインアンプで鳴らしていました。当然アナログレコードです。当時はオーディオのきちんとした知識もないので使いこなせていなかっただけの話なんですけども。このぼわーんとした団子状に聴こえる原因はアナログプレーヤーのセッティングがきちんとされていなかった為です。中小音量では問題ないんです。少し音量を上げて迫力ある音で聴きたくても音量を上げるとぼわーんとなります。これ、解決出来るまで数年かかっています。
なんやかんやで解決するのですが、このオーディオが趣味になった最初の期間が低域の不満だったことがトラウマのように私に影響を与えることになります。
そう、リッチで高解像度でコントラバスを完全に再現出来るスピーカーが私のスピーカーの好みの基本となります。その上でホールに響き渡る倍音成分を完全に自分のシステムで再現したい。これハードルめちゃめちゃ高いです。ですが、こういう明確な自分の好みの音を再現したいという目標がないとオーディオはいわゆる「沼」に陥ってしまいます。
その後20代、30代、40代と歳を重ねるにつれ聴く音楽は広くなり、再生したい音楽もどんどん増えていき、全ての音楽を満足いく再生をすることはなかなか難しいことだとわかってきます。万能のスピーカーなんてないのです。
20代の後半にB&Wのmatrix801のシリーズ3というスピーカーにいきついます。
これです。この前のモデルをカラヤンが認め録音スタジオに導入したという記事を読み興味をもっていました。このシリーズ3が出た当初はナカミチが輸入元だったのですが、バブル後の円高の時にマランツに輸入元が変わり、ペアで96万円というプライスタグがつきました。えいやっと飛びつきました。このスピーカーを導入してからずっと幸せなオーディオライフです。最初は手持ちのサンスイのプリメインアンプです。AU-α907DRというモデルです。その後鳴らしこむにつれアンプはどんどん変化し、最終的にマークレヴィンソンのNO26SLのプリとNO20.5Lというモノパワーに落ち着きました。
この組み合わせで鳴らすクラシックは私にとってはどのシステムで聴くよりも好きな音です。40代半ばまでこのシステムがメインとなっていました。40代半ばまで実家(一軒家)で20畳くらいのかなり音的に良い部屋でこのシステムで聴いていたのですが、仕事で引っ越すことになりマンションに移り住みます。オーディオシステムを持ち込むことは断念しサブシステムのみを持ち込むことになります。子供3人いたので大げさなオーディオシステムはさすがに無理ですし、マンションで40HZを大音量で流したら追い出されますしね。
これが大きなターニングポイントになります。それまでフルオーケストラを大音量で生の演奏会よりずっと良い音で聴けていたのですが、今度は6畳ない部屋です。そこでこの6畳ない部屋で小音量でも満足出来る音を目指すようになります。
長々と書いてきましたが、一番言いたいポイントはここです。
自分の好みの音が明確であればどんな環境であっても自分の好みの音を出せる、ということです。
オーディオの機材の物理的大きさは縮小し、音量も縮小、全てが縮小しますが、音楽は縮小しません。リッチで高解像度でコントラバスを完全に再現出来るスピーカーは音量は小さくとも再現出来るのです。
人によっては低音を嫌う人もいます。その辺の様々な好みについては続きます。
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