nonDuct-B123

スピーカー

新作のnonDuct-B123siです。攻めましたよ。

挑戦しまくりです。

まず目玉はカンナ屑です。内部に吸音材を入れずにカンナ屑をいっぱいに入れることで吸音材の代わりにするのです。以前カンナ屑、吸音材、何も入れない、の三通りで音がどうなるか実験してみました。その時の記事はこちら。

通常の吸音材よりも幾分明るくなり、クリアになる印象だったのでノンダクトバスレフ式で試してみたかったのですが、今回それに挑戦しました。

作成に当たって一番の問題点はカンナ屑の固定です。カンナ屑をただ入れるだけでは、動かすとカサカサとこすれる音がします。これではノイズの発生源になってしまいます。どうカンナ屑を固定するか?が問題でしたが、ようやくクリアできました。まあ、木工用ボンドの濃度をどれくらいにした木工用ボンド溶液を作るか、なんですけど。結構濃くしたつもりでもなかなか思うように結合してくれませんでしたが、ようやく固定に成功しました。

これ完全に固定されています。ユニット回りとダクト入り口に少し空間を設けています。キャビネット内部に結構パンパンに入れていますが、体積的には大したことなくて片チャンネル分でnonDuct-B121の両サイドをカンナで削った分プラスアルファくらいです。フェルトなんかの吸音材を入れるより体積は少なくて済むかもしれません。

このカンナ屑でnonDuct-Bがどうなるのか?なのでユニットは知り尽くしているマークオーディオ製のいつものユニットを使いたい。115や118辺りと同じキャビネットを作るのが一番わかりやすいですが、今出品中のものはあれはあれで完成された音世界があります。やはりせっかくカンナ屑を使ったスピーカーを作るなら新設計でいこう、と。そこで最近何度も使ってそのSN比の良さを信頼している白タモ材の広葉樹をバッフルに使って小型化しつつ内容積を確保する。ホワイトアッシュ16mm厚はかなり強靭です。針葉樹をブロックのように分厚く作るキャビネットは強靭で他を寄せ付けませんが、硬い広葉樹でそれをやると音がカチンコチンになる気がしますし、材料費だけでべらぼうになります。適度に美しく響かせる、硬くないと響きません。エレクロボイスを改造する、で響かせるキャビネットをつくり大成功しました。

響かせるために一番面積の大きな部分にユニットを配置し奥行を浅くとり、板厚は敢えて薄めの11mmのアフリカ欅(アパ材)を使用しました。今回は側板に響きが美しかったアフリカケヤキを使うことにしました。この写真のスピーカーの天板部分がバッフルになる感じにします。ユニットがついてるバッフル部分が側板になります。

しかし、今回はあくまでもノンダクトバスレフ式ですので、ステレオイメージを最優先し、そこにキャビネットに美しい響きを味付け程度にプラスしようという意図です。ですから一番響きに関係するバッフルは硬くて弾力があり16mm厚で高いSN比が見込めるホワイトアッシュ材を使います。そして両側板を美しい響きのアフリカケヤキ材でサンドイッチします。側板は11mmでは響きすぎると思うので14mmをオーダーして用意しました。天板と背板はバッフルと同じホワイトアッシュの16mmを使っていますのでかなり強固なキャビネットになります。底板だけはパインの集成材を使っています。強度を出すために底板だけ19ミリ厚を使用しています。そしてこの構成で背面にノンダクトバスレフ式を採用しています。背面上部は板厚約9センチになっています。

内部写真です。

横135×縦206×奥行310 内容積約5リットル。

ブロックシリーズのnonDuct-B118siと内容積はほぼ同じです。

左が今回の新作123で右が118です。奥行はほぼ同じです(123が10mm長いです)

これだけ大きさが違うのに内容積同じってホントなのか?と作った自分でさえ疑うレベルです。思わず設計ノートで確認してしまいましたよ。同じなんですよね、これが。どちらも約5リットルです。

針葉樹をブロックのように分厚く使うこのシリーズはちょっとバカげたキャビネットですね。しかし、これでしか味わえない音があるのも確かなのでやめられません。

123はある意味スマートなんですかね。硬い広葉樹を使えば38mmなんて馬鹿げた厚みを持たせる必要ありませんからね。

しかし、スピーカーはキャビネットが7割と考えている私はこれこそスピーカーの奥深さと思います。どちらもそれぞれの味があり素晴らしい音を奏でてくれます。

さて、肝心の123の音ですが、びっくりするほどいい音でなっています。カンナ屑、いけます。中高域は前回の実験の時に感じた印象がそのまま出ています。通常の吸音材より幾分明るいイメージです。ですが、1~3khz辺りの音が幾分柔らかい感じに聴こえています。明るくクリアに聴こえますが、硬さは通常の吸音材より感じない傾向にあります。これが全てカンナ屑のもたらした音なのか、ホワイトアッシュとアフリカケヤキのもたらした音なのか。

恐らく両方でしょう。

そして低域の伸びがちょっとびっくりするレベルです。低域を伸ばすと厚みが若干薄れますが、厚みはそのまま下に伸びています。なんでこんなに伸びているのかちょっとわかっていません。考えられるのはカンナ屑しかないんですよね。しかし、カンナ屑でなんで低域がこんなに充実するのか?ちょっと戸惑っているレベルです。むー、わからん。わからんけど、この音はちょっと凄いな。

しかし、いい面ばかりでもなく狙ったステレオイメージは予想より若干後退しています。響きも美しく特性も良く、いい音なのは間違いありません。ただしブロックシリーズ並みのステレオイメージ再生は出来ていません。並べてあった121siと比較すると、音像はやや大きくボーカルの位置が若干前に出て来ています。ステージの奥行再生はブロックシリーズほどの正確さはありません。しかし、音が広がる感じや奥に引っ込まないこの音場再現は、おそらくより多くの人が好む音と言えそうです。これは側板のアフリカケヤキの響きが影響しているようです。朗々となるスピーカーと言えそうです。そして低域は誰が聞いても驚くレベルと思います。

ダクトの動作は狙った通りの動作なのですが、狙った65Hz以下の50hzより下の音までかなりのレベルで再生出来ているのは何故なのかちょっとまだわかっていませんが、とにかく大成功と言える音です。

仕上げはせっかく良い無垢材を使っているので無垢の単板の良さをそのままの質感で仕上げたかったので蜜蠟クリーム仕上げにしました。

蜜蠟クリームも様々ありピンキリですが、この蜜蠟クリームはおススメです。

発色も良くサラサラです。

撮影用のスタンドにデザイン的にはよくマッチしていますね。

追記:一晩中鳴らしっぱなしにしていたら音が纏まってきました。今回はカンナ屑の効果などを確認したくてインプレッションを書くのが早すぎました。主に響きが落ち着いてきたのか、ステレオイメージの再現がグンと上がってきました。他のブロックシリーズに比べて少し落ちると感じた3次元的な音像再現がぴしっとフォーカスが合ってきたかのように浮かびあがってきました。硬い板を組んだ時は落ち着くまで少し時間かかるようです。金属製のFクランプで怪力レベルの私が全力で締め付けて固定しているので接着剤が乾いた後も板自体にかかるテンションが落ち着くまでに少し時間がかかるのでしょうか。これだとまだまだ良くなりそうです。

色も更に塗り重ねていい感じになってきました。

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